展覧会情報 「なくはない」 京都造形芸術大学 大学院 芸術表現専攻 洋画 木村克朗ゼミ展

「造形」ということばの存在があるとすれば、各表現者はそれをどのように解釈し、日々、制作と対峙しているのだろうか。
そして、各自それぞれの視点、定位置で自己主張している今、その作品群が第三者とどのようにコミュニケーションしているのか、大変興味深いことは言うまでもない。
「なくはない」ということばをキーワードに、若いエネルギーのぶつかり合いを期待を持って見届けてみたい。
   京都造形芸術大学 教授 木村克朗

<なくはない>
他国のことばに翻訳し難いこの表現は、日本語特有の曖昧なニュアンスを孕んでいる。しかしながら、日々の中にはそうとしか言いようのない場面が多く存在する。
このたび、私たちが注目したのは、こうした「なくはない」、即ち「無きにしも非ず」な状態に潜むリアリティだ。それは同時に、わかり易く確かな物事に対する、ささやかな反抗でもある。
平易で簡潔ということは、さまざまなやりとりを円滑にしてくれる点でたしかに便利である。
しかし反面、そこへと至る過程のなかでじつに多くの要素が削ぎ落とされ、研ぎ澄まされ、やがて本質から離れたいかがわしさを放つ場合も少なくない。この意味で、見辛く、わかり辛く、不確かであることの方が時として有効なのではないか、そのように考えたわけだ。
とはいえ、実のところゼミ生各人が扱うテーマやモチーフは明確だ。優れた仏師が複雑な木目から唯一の像を見出すように、よくよく目を凝らし、呼吸を整え、絵画とじっくりと対峙するときのみそれは現れる。そう。私たちにとって、絵を「眺める」観客に用はない。立ち止まり、しかと「見る」ことのできる者のみが、私たちの絵画を理解し得る。

―今日、空気中にさえ何が混じっているかわからない、つまり誰も有害なものが「全く無い」とも、「在る」とも言い切ることができないでいる。だからこそ余計に、そうした「なくはない」状態がリアルに思われてならない。

それらを描き起こし、消し、やがて抽象化し、蛇足を繰り返す。


同時開催
「OZへようこそ」
京都造形芸術大学 大学院 芸術表現専攻 洋画 奥田輝芳ゼミ展
2012年11月6日(火)~11月11日(日) CASO SPACE C

開催期間
2012年11月6日(火)~11月18日(日)
開館時間
11:00~19:00(※月曜休館・最終日は17:00まで)
11月10日(土) 17:00~ 奥田ゼミと合同レセプションパーティー
開催場所
SPACE B
展示内容
京都造形芸術大学絵画
作家名
田中幹 TANAKA Motoki
白石彩音 SHIRAISHI Ayane
田中淳一 TANAKA Junichi
小川万莉子 OGAWA Mariko
松村綾香 MATSUMURA Ayaka

展示風景

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田中幹 Tanaka Motoki

1985年 京都市生まれ
2012年 京都造形芸術大学大学院博士課程芸術専攻、在籍中

[展覧会]
2006年 「シェル美術賞」/代官山ヒルサイドフォーラム、東京(尾崎信一郎審査員奨励賞)
2007年 「個展-瞬間の連続、集積-」/海岸通ギャラリーCASO、大阪
2007年 「新鋭作家選抜シリーズ展」/HONMACHI ART GALLERY、大阪
2007年 「P&E」/ARTCourt Gallery、大阪
2008年 「奨学生美術展」/佐藤美術館、東京
2009年 「VOCA展-新しい平面の作家たち-」/上野の森美術館
2010年 「Painting in Question」/gallery 16、京都
2011年 「KYOTO OPEN STUDIO 2011」/京都市内各スタジオ
2011年 「神戸ビエンナーレ共催・AMA-Art Meets Amagasaki-展」/旧尼崎警察署跡、兵庫
2011年 「ORA展vol.3-いま、描く-」/コートギャラリー国立、東京
2012年 「KYOTO OPEN STUDIO 2012」/京都市内各スタジオ
2012年 「MONSTER PROJECT」/京都造形芸術大学 NC棟前広場、京都

一見、ありふれた色面絵画か抽象絵画を思わせるかもしれない。しかし、それらはすべて小さな「0」の集積で描かれている。0、Zero、零。それはすなわち無(nothingness)であり、空(emptiness)であり、あらゆるものを生み出し得る深遠なる空虚(Void)でもある。
いずれにせよ、おそらく私の作品は万人にとって分かりづらく、見づらい。しかしあなたが私の作品を見過ごしかけたその瞬間に、目の前を覆うようにして無数の0たちがどっと押し寄せてくることだろう。私が0で絵画を描く理由はそこにある。事実、いま私たちの眼前に広がっているのは0と帰した世界に他ならないのだから。そして誰もがその0の見にくさ、捉え難さを痛感している最中であろうと思う。

作品(左):「elements」パネルに油彩、ウレタン樹脂、2010
作品(中、右):「W-0-∞」 パネルに綿布、アクリル、スタンプ 2012

田中淳一 Tanaka Junichi

田中淳一 Tanaka Junichi 1987年 広島県生まれ
2012年 京都造形芸術大学大学院修士課程芸術表現専攻、在籍中

[展覧会]
2010年 「赤子と黒子のantique」/ ART FORUM JARFO、京都
2011年 「T・ジョイ×京都造形芸術大学大学院」展/イオンモールKYOTO T-JOY、京都
2012年 「MONSTER PROJECT」/京都造形芸術大学 NC棟前広場、京都

流動的でありながらも静である作品を目指して制作しています。
「モノが溢れているのに満たすことができない」
最近このような事を考え制作を行っている影響があると思います。

作品(左):「New Born」パネルに綿布、油彩、2011
作品(中の写真の左側):「Unconditional」パネルに綿布、油彩、2012
作品(中の写真の右全体):「Rearrange」紙、油彩、パステル、2012
作品(右):「Dissolve」パネルに綿布、油彩、2012

白石彩音 Shiraishi Ayane

1988年 京都府生まれ
2012年 京都造形芸術大学大学院修士課程芸術表現専攻、在籍中

[展覧会]
2012年 「MONSTER PROJECT」/京都造形芸術大学 NC棟前広場、京都

目には見えないけれど、確かに何かがそこに存在している。そしてそれらのうごめきが、この世界や私自身をつくりあげているように感じる。

作品(左):「小石は川へ返ったか」パネル、ミクストメディア、2011
作品(右):「木と木」パネルに綿布、カゼイン、アクリル、膠、顔料、墨

木が揺れるのはなぜか。自然の構造を絵画で再現したい。

松村綾香 Matsumura Ayaka

1989年 大阪府生まれ
2012年 京都造形芸術大学大学院修士課程芸術表現専攻、在籍中

[展覧会]
2009年 「欲展」/ギャラリースエヒロ、京都
2011年 「KOREAJAPAN CONTEMPORARY ARTS EXCHANGE EXHIBITION」/ART FORUM JARFO、京都
2011年 「三日展」/ART FORUM JARFO、京都
2011年 「めばえ展」/京都造形芸術大学Galerie Aube、京都
2011年 「三日展」/ART FORUM JARFO、京都
2012年 「MONSTER PROJECT」/京都造形芸術大学 NC棟前広場、京都

身体が動くままに線は走り続け、無心で突っ走る。
動きのある“線”や“痕跡”に魅せられ、様々な線を重ねていく。
流動的な線に静寂な線、重なり合ってできる絵具の厚みや、層、色彩。それは偶然できたものであり、必然的にできたもの。
自然が創りだす力強さのように、自分は自分の持っている全てのエネルギーを表現したい。

作品(左):「跡Ⅲ」パネル、綿布、アクリル、木炭、2012
作品(右):「うつりゆく」キャンバス地、アクリル、木炭、2012

わたしのまわりの、わたしにみえる、いろんなものは常に変化し続けている

小川万莉子 Ogawa Mariko

1987年 熊本県生まれ
2012年 京都造形芸術大学大学院修士課程芸術表現専攻、在籍中

[展覧会]
2011年 「海馬はいつかける」/ギャラリーマロニエ、京都
2011年 「Hers'2011」/同時代ギャラリー、京都
2012年 「Hers'2012」/同時代ギャラリー、京都
2012年 「MONSTER PROJECT」/京都造形芸術大学 NC棟前広場、京都

椅子のある空間を描いている。
誰かがそこに座り、その空間と一体となって時が過ぎる。立ち去った後にも残る気配。
一つの椅子を取り巻く空間の中には、膨大な量の記憶や想い、気配が詰まっている。
このような形のないものを実在させる試みを繰り返す事で、存在がじんわりと私の中にしみ込んでくる。
これが私のリアリティだ。

作品(左):「向こう側」パネルに綿布、油彩、2011
作品(右の写真の左側):「ゆらぎの傘の下」パネル、和紙、油彩、アクリル、墨、木炭、蜜蝋、2012
作品(右の写真の右側):「ひとつ、少しばかり」パネル、和紙、油彩、アクリル、墨、木炭、蜜蝋、2012

言葉の曖昧さに消されてしまいそうだが確かにここに在るのだ

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