展覧会情報 濱谷明夫 「FIBER AND SPACE」

ファイバーアート、糸による造形作品のインスタレーション。

濱谷明夫さんはファイバーアートの分野で世界的に活躍する作家です。

2005年4月の展示に引き続き、CASO中央の天井高7mの空間に、糸という素材のつくる美しい形を展示します。

開催期間
2007年5月15日(火)~6月3日(日) 休館日なし
開館時間
11:00~19:00 (最終日 17:00まで)
開催場所
SPACE A
展示内容
インスタレーションテキスタイル立体
作家名
濱谷明夫 HAMATANI Akio
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5月20日(日) 17:00~ コンテンポラリーダンス公演+パーティー開催

  糸の造形とダンサーの動きが交差し
  空間に新たな緊張感を生み出す

   構成・演出: 碓井節子
   ダンサー: 高見智征、中西ちさと、福井菜月、村上真奈美、山下達也

  入場無料、軽い飲み物などを用意しております

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展示風景

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「素」としての糸が奏でるもの


和歌山県立近代美術館 教育普及課長 浜田拓志


展示前の状態と展示されている姿。その印象がこれほど変わる作品も少ないのではないだろうか。1989年以降、濱谷明夫の作品展示に何度か関わった私はそう思う。

アトリエのなかに置かれたエアーキャップの包みをふと見かけた人は、その中身が大きな弓状の何かだと思うだろう。実際、梱包材の上から触っても、弓状のスチールパイプの手応えしかない。

ところがいったん梱包を解かれ、天井から吊られて、一本のレーヨン糸が、重力によって自然な曲線を描きながらスチールパイプの枠を往復するとき、当初のこぢんまりとした梱包物は、軽やかで明快な曲面として、大きく優雅なオブジェとして立ち現れる。

しかもここでいう「曲面」は、例えば彫刻作品の「面」とは違って、そのむこうの景色を遮ることがない。糸の曲面のむこうにまた別の糸の曲面が透けて見え、さらにそのむこうに天井のスポットライトが滲んで見えたりする。不透明でもあり透明でもあるという糸の二重性が、簡素で美しいフォルムに表現されている。

中空に浮かぶ秩序だった糸の集合は、室内に生じるかすかな気流にも揺れ動き、スポットライトで明るく透かされた糸は、その一方で縞目の繊細な影を床に落とす。その影の揺らぎには名状しがたい魅力がある。こうして我々は、歩きながら視点を変え、糸が織りなす表情の数々を楽しむことができるのである。


現代造形の分野で主題的に取り上げられることが、それまでほとんどなかった糸という素材に濱谷が取り組み始めたのは、1970年代の初め頃である。1973年の「糸―素材による展開展」と題されたグループ展における初めての発表以降、約5年間の作品は、赤く染めた綿糸を撚り、紐にして、それをまた撚ってできたオブジェ群であった。しばしば呪術的と形容されるこれらの作品は、糸の情念的で不気味な側面を引き出したものであった。

しかしその後濱谷は、糸という素材のもつ自然な美しい状態を活かすために、結ぶ、編む、染めるといった手わざの加工を次第に排除していく。そのような純化の過程で得られたのが、重力による糸のたわみだった。その際、選ばれた色は、生成りの白である。

素材が1980年代を境に綿糸からレーヨン糸に変わり、糸を往復させる金属パイプなどの軸線にバリエーションが与えられる都度、濱谷の作品は新たな相貌を見せてきた。1995年からは、白以外の鮮やかな色も採り入れられている。

1998年頃からは、壁や床を支持体とする作品、たとえば"円環"シリーズが制作されている。そこでは、糸に重力が与える自然なカーブも、糸の透明性も用いられてはいない。しかし作品の中心に据えられているのが、糸のシンプルな美しさ、ミニマルな存在感、濱谷のいう「素」(そ)の部分であることに変わりはない。


今回の展覧会では、中空に浮かぶ優美な"Orbit"と、床面から力強く上昇していく"円環"、そして平面の作品が展示される。おそらく濱谷明夫はそれらが響き合うようなインスタレーションを目指すであろう。


アトリエに置かれている梱包物が楽譜であるとするならば、展示室内のインスタレーションは演奏されている曲である。濱谷が一貫して追求してきた「素」としての糸の可能性は、今後彼の手によってどのように引き出され、それがいったいどのような曲を奏でるのか、楽しみである。


濱谷明夫 HAMATANI Akio

一本の糸がいちばん自然で美しい状態を作り出す。
それは素材の持つ"素"の部分との対話でもあるのです。
軸線の上を等間隔に一本の糸を旋回させていくと、幾つもの重なり合う円弧がリズミカルな動きを生む、
線から面へと移行するプロセスの中で、生命感覚が糸の持つエネルギーとひとつになって行きます。
それを空間に解き放ったとき、糸はわずかな空気の動きにも敏感に反応し、表情豊かな流れを生み出し
ながら、空間に関わりあう意味を明確にしてゆくのです。
形作られ設置された空間の中での素材 ― 糸 ― は、一つの運動の軌跡としてだけ残り、その実在を
消滅させるように"素材"への思考が垣間見ることが出来ればと思うのです。


作家略歴

1973年より個展、グループ展多数
1983 国際タペストリービエンナーレ展(ローザンヌ、スイス)
1984 近代建築におけるテキスタイルアート展(フランクフルト、ドイツ)
1988 サントリー美術館大賞展(東京)
1989 パース国際トリエンナーレ展(パース、オーストラリア)
1990 ジャパンアート展(レトレッティ、フィンランド)
1992 国際現代ファイバーアート展(慶州、韓国)
1999 国際テキスタイルコンペティション展(京都)
2001 大阪トリエンナーレ2001(大阪)
2005 金沢駅ガラスドームに作品展示
2005 「濱谷明夫展」(CASO、大阪)

左:東京、臨海斎場アートワーク
中央:大阪トリエンナーレ(2001、CASO) 
右:CASOでの展示(2005)

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