展覧会情報 Towards Utopia

 TowardsUtopia - ユートピアに向かって -

 『Utopia』とはギリシャ語の「ユー(ない)」と「トポス(場)」を組み合わせた造語であり、その語源は一五一六年にトーマス・モアが著書の題名につけたことに遡ります。
 一九九三年、ニューヨーク、グッゲンハイム 美術館では「グレート・ユートピア」展、また今年、パリ国立図書館では「ユートピアの歴史」展が開催されました。これらは過去を振り返り、その時代においてユートピアがどのようなものであったかを探る実証的なものです。
 本展は、現在のユートピアがいかなるものであるのか、作品を透過しアートの世界でアーティスト各々が目指すものが何なのかを「観る」展覧会です。世代、個人的背景、表現する方法の違いは明確でありながら、アーティストは共通言語化された「アート」の世界で各々のアート(Utopia=何処にも無い場)に向かって歩み続けています。その行為には社会的な意思はなく、あくまで個人的な意思のもとに 作品は生み出されます。 アーティストのこの行為はいかなる時代が到来しても繰り返されるでしょう。そして個々の試みは、まだ見ぬ 社会の新しい価値をも生み出すことができると確信しています。

開催期間
2000年9月30日(土)~11月26日(日)
開館時間
11:00~19:00(※月曜休館)
開催場所
SPACE A・B・C・D
展示内容
インスタレーションギャラリーヤマグチ写真版画絵画
作家名
桑山忠明
石原友明・藤本由紀夫・大久保英治
安藤由佳子・丸尾直子・井谷菜々・三浦洋子
サイモン・フィッツジェラルド

TowardsUtopia - ユートピアに向かって -

 
協力:株式会社住友倉庫
協賛:アサヒビール株式会社 株式会社資生堂 松下電器産業株式会社
    住友建設株式会社 住友電設株式会社 日建設計株式会社   
    大和証券SBキャピタル・マーケッツ株式会社 セントラル警備保障株式会社
助成:財団法人野村国際文化財団  
後援:国際交流基金  
機材協力:日本ビクター株式会社  


この展覧会はギャラリーヤマグチの企画のもとに進められ「実行委員会方式」で実現いたしました。
 

 

各室展示紹介

  • 桑山 忠明 - project for CASO
     
    000930a120.jpg何もないスペースに作品が設置された瞬間つくられる空間は、体験したことのない新たな次元を感じさせる。 空間に踏み入れた時、見る人は時間を忘れ、その空間が一体何なのかを考える作業を始めているだろう。

1932年名古屋生れ。1956年 東京芸術大学日本画科卒業。1958年渡米、以来ニューヨークにて制作在住。90年初頭からヨーロッパ <チューリヒ(スイス)/ロイトリンゲン、インゴルシュタット(ドイツ)/ブリュッセル(ベルギ-)/ザルツブルグ(オ-ストリア)>、日本<川村 記念美術館、千葉市美術館、北九州市立美術館>で「one project for one space」を展開。今回で15作目。
 
 

  •   五感の芸術 -その身体性の拡張

  • 000930B120.jpg 石原友明は写真を使うことによって視覚を、藤本由紀夫は音によって聴覚を、そして大久保英治は大地を 歩き、自然素材を使うことによって視覚的な触覚を 各々の表現は鑑賞者に五感を意識させると共に、 五感という人間の感覚機能の回路を新しく切り開いてくれる。日常の何気ない風景や身の回りのものに、 その隠れた秘密が存在していることに気づかせてくれるでしょう。
    (本展は99年ハンブルクのクンストハウスで開催された大阪・ハンブルク友好都市提携10周年記念事業「日本現代美術展-大阪からの3人 のアーティストたち」を新たに構成した展覧会です。企画協力:加藤義夫芸術計画室)
     
     
     
  •   New Generation '00

  • 000930c1-120.jpg ドイツより参加した安藤由佳子はヘルメット状のテントの中での日常性を表現し、その中に映し続けるビデオではその日常性の不安な状況を示唆した映像を流している。また、近作の短編ビデオをも緊迫した、しかし取り留めのない日常を端的に表現している。
     丸尾直子は人工物が放つ光りと自然の光りの同調に興味を持ち、強い筆跡でおおらかに表現している。
     井谷菜々はシルクスクリーンという古典的な手法ながら、シルクの目を埋めるようにしてモノトーンの世界を追求しているのだろう。版画の手法ではあるが、モノタイプとも言える作品である。
     三浦洋子は従来より絵画を意識した仕事を続けている。今回は新たな展開を見せてくれている。それは彼女の中での絵画の新たな可能性として、カンレイシャを表面に張り付け、見る人の位置によって表面の表情が違ってくる効果を示している。このことは他のNew Generationの作家にも言えることだが、彼女等の中での新しいディメンシオンの模索であるように見える。
     若きアーティストの今後の発展を期待しています。

                 

                •  サイモン・フィッツジェラルド -trace

                • 000930D120.jpg 1957年英国生。1981年 コベントリー芸術大学油画卒業。1986年 京都市立芸術大学大学院油画修了。
                   近年のペインティング「 Breath(呼吸)」シリーズは、その微妙な色彩とラインで作家個人の身体の状態、精神の状態をありのままに表現した静謐な作品を展開している。今回Space Dで-Blue Room-とも言える青色地の6点のラインペインティング、ギャラリーヤマグチのスペースでは木肌のドローイング21点を展示している。緊張感の漂うSpace Dと木肌のドローイングは何の関係も無いように見えるが、画面に集中した精神性が伝わる。木肌が主題ではなく、木肌にあるラインに作家は集中しているのです。

                   "Drawings are about searching, paintings are about what I find." - S. Fitzgerald

                 

                 

                オープニングレセプション
                 
                9月30日(土)午後5時~7時・海岸通ギャラリー・CASO ラウンジにて

                op.jpg

                 

                Towards Utopia展は海岸通ギャラリーCASOオープン第一回目の展覧会となりました。
                約400名の出席者によりオープニングレセプションが盛大に行われました。

                kuwayama.jpg桑山忠明さんもニューヨークから展覧会のためにいらっしゃいました。

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                DSC00006.JPGspace C

                 

                DSC00008.JPGspace D

                 

                DSC00004.JPGspace B

                 

                DSC00005.JPGspace C

                 

                DSC00009.JPGspace A

                 

                 

                その他のイヴェント
                オープニングレクチャー

                • Subjective Utopia in Art
                • 000930sr1.jpgロバート・C・モーガン N.Y/ロチェスター工科大学教授<美術史/美術理論>
                  9月30日(土)午後2時~4時・海岸通ギャラリー・CASOラウンジにて
                  ●参加費無料 50名先着 電話予約要Tel:06-6577-0998
                  ==<終了:約80名の参加がありました。>==
                  ==<多数の御来場ありがとうございました>==

                 

                 

                • New Generation '00 talk
                   
                  000930rect10-1.jpgNew Generation '00出品作家と推薦者によるフリートーク。
                  自作について。自身にとってのこれからの美術、これからの美術の場について。
                  10月1日(日)午後2時~4時・海岸通ギャラリー・CASO ラウンジにて
                  ==<終了:約20名の参加がありました。>==
                  ==<多数の御来場ありがとうございました>==

                   

                   

                  • 帝塚山学院大学 美学美術史ワークショップ 「アート・スペースの可能性」

                  • 10月26日午後5時~6時30分 海岸通ギャラリー・CASO2階ラウンジにて
                    講師:山口孝(ギャラリスト)、藤本由紀夫(アーティスト)
                    主催:帝塚山学院大学美学美術史学科・帝塚山学院大学美学会 
                    ●問合せ先:帝塚山学院大学 TEL0723-65-0865
                    ==<終了:約80名の参加がありました。>==
                    ==<多数の御来場ありがとうございました>==
                     

                   


                  アートヴィデオ上映
                   
                  海岸通ギャラリー・CASO 2Fラウンジにて常時御覧いただけます。
                  ・TADAAKI KUWAYAMA "PROJECTS'96"
                  ・大久保英治"四国と天と地の間 阿波の国から歩く"
                  ・YUKIKO FUJIMOTO"see+hear"
                  ・Robert Irwin "The Beauty of Questions"他

                   

                   

                   

                   

                  レビュー
                   
                  オープニングレクチャーにお越しいただいた、ロバート・C・モーガン教授による
                  NY Arts Magazine誌 (2000年11月号)掲載の評論です。

                   

                  Towards Utopia: Osaka, Japan
                  by Robert C. Morgan
                  on November 02, 2000
                  from NY Arts Magazine Vol.5 no 11 November 2000
                  by courtesy of the author


                   

                  大阪の関西空港に降り立つと旅行者は特異な未来的体験をする。森万里子の大規模なCープリント作品の一つで有名な関西空港は、3年前に有名な建築家レンゾ・ピアノの設計によって"浮き島"の上に建設された。関西空港はあらゆる最新の芸術・技術で生彩を放つ、サイエンス=フィクション的な環境の、注目すべき場所である。空港への乗り入れは実に感動的であった。われわれの乗ったボーイング747がこの伝説的な島の東の沿岸を徐々に南へ降下するにつれ、山間に寄り添い港や湾にこぼれ落ちそうな村々のある沿岸水域を滑空し、ついには目的地点である空港島が視界に入る。着陸地点が近づくと、大阪の景色を機の右側に見て滑走路に確実に着陸するために、パイロットは水上プラットホームと見まがう島を囲むように旋回した。

                   

                  大阪は東京に比して現代美術の展覧会の広がりが一般に知られていないが、ここ数十年重要な芸術家の拠点として寄与してきたーすなわち具体グループと2, 3の重要なギャラリーである。これらの一つにギャラリーヤマグチがある。大阪港近くに位置する同ギャラリーは"Towards Utopiaー理想郷に向かって"という展示で新たなオープニングを飾ったばかりである。

                   

                  ギャラリーヤマグチの新しい空間は、CASO(Contemporary Art Space OSAKA)と呼ばれるオルタネイティブな展示スペースとして提供されている建物の中にある。山口氏は数年来、若手作家や名声を確立した国際的作家双方の質の高い作品を紹介し注目されている日本美術界の卓越した人物のひとりである。"Towards Utopia"は、CASOの主展示場で桑山忠明の大規模なインスタレ-ション(展示)を提示している。これは人工の素材ベークライトで製作された規格サイズの垂直の要素から組み立てられ、全空間を包み込んでいる。さらにいまひとつ「新世代(New Generation)」に充てられた一室がある。この場合の新世代とは、大阪から発信する日本の若い芸術家世代のことであり、具体的には安藤由佳子、井谷菜々、丸尾直子、三浦洋子の各氏である。
                  そのなかで最も興味を惹くのは、安藤由佳子である。彼女は目下デュッセルドルフで制作に励む若き日本女性である。彼女の"Y's Life"(1999)と題する居住造形空間は、建設労働者のヘルメットの形をしたテントから成っている。そこにはビデオモニターや、枕・軽食・懐中電灯・携帯寝具等といったいろいろな物を備え置いた。ビデオでは彼女が黄色いヘルメット(テントのデザインにもなっている)を被り、上から落ちてくるさまざまな物から身を守っている姿が映し出されている。安藤氏の作品は、我々がそれと気づかずに公私両面にわたって侵蝕されようとしている安物という爆弾に対する絶妙な警告である。

                   

                  いま一つの区画は"五感に訴える芸術―身体の延長として"と題して3名―藤本由紀夫、石原友明、大久保英治―の芸術家が出展している。これらの作品は主として視覚と触覚に関する体験の感覚の交錯局面を扱っている。"Towards Utopia"の第4の区画は、アイルランド系芸術家によるペインティングとドローイングの展示である。名はS.フィッツジェラルドといい、約20年前に仏教を研究するために日本に移り住んだ。彼は京都滞在が延びて完璧な日本語を書き、話せるようになった。彼のペインティングは、繊細な水平線を乾ききっていない絵の具に刻むことを通して解釈される呼吸時の瞑想そのものである。この過程を通して確立された躍動的な構造は、全くもって注目すべきものであり、絵画という伝統的媒体に関する一つあるいは一連の行動の証拠を暗示している。注視すべきは、呼吸を幾重もの水平線で表現するというフィッツゼラルドの意図が、いかに字を書く行為と瞑想とに結び付けられているかということである。どういうわけかこの作品には満足感に浸った自惚れといったものはなく、また何とかして西洋理論のわずらわしい押し付けから逃れようとするような目立った軽薄性もない。

                   

                  CASOとギャラリー ヤマグチは、趣は異なっても概して質の高い展示をすべく協力している。その最初の展示にあたり、山口氏の設定した高水準があまねく行き渡ることが期待される。このような展示の成功は地方行政から切り離された質の高い水準の如何による。この高水準が主流となり、大阪におけるこの重要な先駆的試みの発展がさらに大きな成功につながることが期待される。さらに望むらくは、これまでなにほどの達成もなかった大阪トリエンナーレとやらを支援している大阪府の文化部が"Towards Utopia"の先例を糧とすることである。この点で"Towards Utopia"という言葉が暗示する理想主義の考えは、大阪がアジアの来るべき現代芸術で主導的役割を果たすか否かに関し重要な役割を演じることになろう。

                   

                   

                  Flying into Osaka's Kansai Airport offers the traveler a unique futuristic experience. Celebrated in one of Mariko Mori's large-scale C-prints, Kansai Airport is built on a "floating" island designed and fabricated three years ago by the famous architect Renzo Piano. Kansai is a remarkable place, a science fiction environment, adorned with all the latest state-of-the-art technologies. The flight into the airport was completely enchanting. As our 747 moved gradually south along the eastern seaboard of these legendary islands, gliding along the coastal waters, with villages nestled between mountains or spilling out into harbors, bays, and ports, we finally caught sight of our destination. As we reached the point of descent, our pilot instigated a spiral arc, circling around on to this hallucinatory water-platform, only to land firmly on the runway with a view of Osaka on the right side of the plane.



                  While generally not known for a breadth of exhibitions of contemporary art, in comparison with Tokyo, the city of Osaka has served as the base for several important artists in recent decades -- namely, the Gutai group -- a few important galleries. One of these is Gallery Yamaguchi, situated near the harbor area of Osaka, that recently opened its season with an exhibition entitled "Towards Utopia".



                  The gallery's new space is currently located in a building that also serves as an alternative exhibition space, called CASO (Contemporary Art Space Osaka).



                  Over the years, Mr. Yamaguchi has been one of the preeminent forces in the Japanese art world, bringing attention to high quality art by both younger and established international artists. "Towards Utopia" featured a large-scale installation in the main gallery of CASO by Tadaaki Kuwayama, an untitled work constructed with modular vertical elements, fabricated in a synthetic material called bakelite, that encompassed the entire space. In addition there was a section devoted to the "New Generation"-- meaning, in this case, the generation of younger Japanese artists from Osaka. They included Yukako Ando, Nana Itani, Naoko Maruo, and Yoko Miura.


                  The most interesting of the group was Yukako Ando, a young Japanese woman currently working in Berlin. Her habitat installation entitled "Y's Life"(1999) involved a tent shapes like a construction worker's helmet in which she has installed a video monitor and various provisions, such as pillows, snacks, a flashlight, bedroll, etc. The video on the VCR is a tape of her wearing a yellow helmet (the prototype for her tent design) in order to protect her from various commercial products and packages that keep descending from above. Ando's work is a wonderful comment on the bombardment of cheap logos that manage to invade our private/public world to the extent that we are not aware that it is happening.


                  There is another section entitled "Art of the senses -- their physical extension" that includes three artists: Yukio Fujimoto, Tomoaki Ishihara, and Eiji Okubo. These works deal with the transsensory aspects of experience mostly related to vision and tactile sensibility. The fourth section of "Towards Utopia" is a representation of paintings and drawings by an Irish artist named Simon Fitzgerald who moved to Japan nearly twenty years ago to study Buddhism. During his extended stay in Kyoto he managed to learn to write and speak impeccable Japanese. His paintings are meditations on breathing as translated through the incision of thin horizontal lines into wet paint. The rhythmic structures that are established through this process are quite remarkable, suggesting evidence of an action or series of actions in relation to the traditional medium of painting. What comes to mind is how the Fitzgerald's attention to these lines as a parallel manifestation of his breathing is also related to calligraphy and meditation. Somehow there is a lack of pretension about the work that is satisfying and a remarkable lightness that somehow is exempt from the burdensome imposition of Western theory.



                  CASO and Gallery Yamaguchi have collaborated to produce a diverse but generally qualitative exhibition. Given that this is the first in a series of collaboration exhibitions, it is hoped that the qualitative standard set by Mr. Yamaguchi will prevail. The success of such an exhibition is contingent on a qualitative standard that is removed from local politics. One hopes that this standard will prevail and that the development of this important pilot project in Osaka will move toward greater success. It is further hoped that the Cultural Affairs Division of the Osaka Prefectural Government that sponsors something called the Osaka Triennial, which has thus far failed to achieve anything significant, will take an example from the example put forth by "Towards Utopia". In this context, the idea of idealism, as suggested by the term "Utopia",will play an important role in whether or not Osaka takes as leading role in the future of contemporary art in Asia.



                   

                Back

                PAGE TOP